★頼朝伝説(3) もう一つの「箸杉」 

 
  名熊の箸杉には教育委員会の説明プレートもついています。

いすみ市には岬町和泉とは別に大原町布施地区名熊にもほぼ同じ内容の「箸杉伝説」があります。画像のように名熊の箸杉は鳥居まであってたいしたものです。

――源頼朝が平家打倒の勢力を結集するために上総の有力者を訪ねて布施の名熊に来た。ここは有力武将・上総広常の館跡とみなされる殿台がある。
その近くに二本の杉が絡み合って育った高さ12mの杉があり、いすみ市の指定民俗記念物となっており、頼朝が昼食後、地に挿した箸が成長したものと伝えられている。――

①頼朝が杉の小枝を箸にした。 ②地面に挿した箸が大木になった、という二点が伝説の核心で、和泉の伝説とまったく同一です。
それは本当にあった話かとか、どちらが正しい伝承の地かなどと詮索するのはヤボというものです。その土地の人々がそのような伝説を何百年も大切にしてきたこと自体が素晴らしく、尊重されねばなりません。

ではなぜ同じような伝説が二つもあるのでしょうか。箸に使った杉が大木になるという「箸杉伝説」は実は全国各地にあり、めずらしいものではありません。
たいていは弘法大師様が食後に箸を地面につきたてたら…、あるいは坂上田村麻呂が…という形で伝わっています。
源頼朝が…という点が房総らしい特徴です。
房総武士団の戦闘力を背景に武士の時代・鎌倉幕府が成立します。房総の人々が新しい世の中の到来を地元の功績として誇らしく思い、昔、頼朝がネ…と語り継いだものでしょう。
この地域の人々はそれほど頼朝が好きだったのだと思います。

当時は杉の割り箸などはなく、マイ箸持参ということもなく、杉の小枝を小刀で切り落として箸にすることは普通のことでした。
それにしても頼朝は行儀が悪い。箸を突き立てるなんて…と現代人は思います。
杉の小枝を地面に挿すのは「神よ、ここに来たれ」という一種の呪術的行為で、神に祝福された土地であることを示す儀式です。
木を植える、杭を打つことはこの土地がその人に所属することをも示す目印でした。

若い杉の小枝なら、伝説のようにそのまま根付いて育つこともありうる話です。
実際、私の経験ではムクゲの枝を払い、後日それをサヤエンドウの誘引に使ったら葉が生えてきたので驚きました。そんなことも伝説の背景にはあるのでしょう。

蛇足:キャンパーが箸を忘れ、近くの夾竹桃(キョウチクトウ)の枝を切って箸に使ったら食中毒になったという事件がありました。夾竹桃は毒樹。箸に使うなら杉やヒノキです。

 

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