テイカカズラ(定家葛)の花

 
        6月はテイカカズラの季節です

かなり丈夫なツル性植物で、山道を歩けばふつうに見られ、あるいは広い屋敷林や墓地などでもその気になればかなり見つけることができます。
船のスクリューのようにややねじれた五弁の花がその特徴です。
ウッソウとした暗い山道の途中でこの白い花がびっしりと咲いているのはなかなか見事で、幽玄のおもむきさえあります。

名前の由来は金春禅竹作の謡曲『定家』による。定家は和歌の名手・藤原定家。
定家の恋の相手が式子内親王。彼女の歌は百人一首で有名。
玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらえば 忍ぶることの 弱りもぞする

死んだ方がマシだ。忍ぶ恋に耐えきれないから――という情熱的な恋は実らなかった。ここから二つの説がある。

A説:カズラ(葛)=定家説。(謡曲『定家』)
式子内親王の墓に定家が葛となってまとわりつき、内親王は困窮する。
そこへ旅の僧が現れ、内親王の亡霊の願いを受け、一心に供養すると定家の執念は昇華され、二人の霊ははじめて一体となったという。

B説:カズラ(葛)=式子内親王説(何有荘オリジナル)
能『定家』の定家と内親王の役柄をそっくり入れ替える。
内親王の執念が葛となって定家の墓にまとわりついている。
旅の僧の供養によってその執念が昇華されて大団円となる。

定説となっているA説は不自然。
亡霊は執念を残して死んだ人。供養によって成仏する――のが能の基本ストーリー。
A説では亡霊=内親王、執念=葛=定家となりなんともチグハグ。
B説では執念=亡霊=内親王となり、供養で執念が解消するので話に一貫性がある。
いくら遊んでもOKな男性貴族が、残る執念で葛にまでなるとは思えない。
恋を禁じられた情熱の内親王ならば亡霊になりえると思うがどうだろうか。
大木にからみついている可憐な白い花は甘い香りがして内親王にふさわしい。

思うに謡曲『定家』は皇室をおもんばかり、不敬となることを意識的に避けたのではないか。
能を見る方も配役が逆だと言うことを十分承知して鑑賞していたが、そのうち能のテキストが一人歩きするようになったというのが、わたしの勝手な想像です。

何有荘オリジナルの欠点はただ一つ。
秋にできるテイカカズラの種は白く長い髭ヒゲを持つ。
だから葛=男性という連想も捨てがたい。
まぁどちらにせよ、謡曲『定家』自体が創作で、事実に基づいた話ではありません。
だれが名付けたかテイカカズラ。
なかなか粋な命名です。

 

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