★水辺のカキツバタ

カキツバタ
     いすみ市の某水辺にて

カキツバタは全体に濃紫の花。その花びらには筆で一筋の白い線を描いた模様があります。
いずれがアヤメかカキツバタといい、それは優劣付けがたい美女の例えです。

でも慣れれば季節の花としてのアヤメとカキツバタは容易に区別がつきます。
アヤメも総濃紫の花ですが、花びらの模様が一筋の白い線ではなく、網目模様になっています
アヤメは陸生、カキツバタは水生という点でも区別がつきます。

平安初期のプレイボーイに在原業平という歌人がいました。
この人物が未来の皇后と目されている藤原高子をたぶらかしたということで藤原氏の逆鱗に触れ、京にいられなくなり東国への旅に出ます。
その途中、三河国の八橋という場所で昼食休憩をとったとき、カキツバタが美しく咲いていました。
旅を共にした友人が「かきつばたという五文字を使って旅の歌を詠めとリクエストします。
その時の即興の歌が

  唐衣 きつつ馴れにし つましあれば はるばる来ぬる 旅をしぞ思ふ 

  らごろも つつ馴れにし ましあれば るばる来ぬる びをしぞ思ふ

唐衣は着るの枕詞で、立派なというニュアンスを含んでいます。肌になじんだ妻だったのに、その妻を都に置いてはるばる来てしまった旅をしみじみ思うとでも訳しましょうか。
蛇足ながら、都に残した妻は古女房ではなく藤原高子のことだと考えるのが妥当でしょう。

五七五七七の頭を「かきつばた」とした驚異的テクニックですが
五七五七七の尻を一文字ずつ逆に読めば(濁点表記は当時はなく、清音表記)「ふるはしも」となります。
これは「古橋・藻」となり、八つ橋の水辺の風景を読み込んだと読み解くこともできます。
頭と尻、これを上品に冠と沓と言いますが、冠と沓に景色を読み込む超・超絶技巧で開いた口がふさがりません。さすが当代一流の歌人・在原業平の歌です。

ついでに尾形光琳の国宝・燕子花(カキツバタ)図屏風を拾ってきました。
水辺にカキツバタ、これでカキツバタを見誤ることはありませんね。

     カキツバタ2



 
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