羽化したてのヒグラシ

   

セミの抜け殻、つまり空蝉(うつせみ)は何度も見たことがありますが、脱皮したてのセミを見たのは初めてです。
背中が割れて出てきたばかりのセミは全身が白くそして薄緑色をしています。
羽はまだ小さくクシャクシャにたたまれていました。
セミにも心臓があるそうで、全身に血流を強く流すことによって、たたまれていた羽はしだいに伸びていき、やがて一人前の姿になって飛んでいきます。
体も羽化したてと比べるとずいぶん大きくなりました。

生まれたてのセミの羽が特に目立って薄緑色に見えるのは、おそらくその血流のせいです。
人間や動物の血が赤いのは鉄分を含む赤血球中のヘモグロビンに由来するのですが、それ以外の生物では緑の血を持つものの方が多い。
これはヘモグロビンではなく、銅成分を含むヘモシアニンが主役を果たしているからです。
ウサギの目が赤いのは血の色が透けて見えるため。それと同じようにセミの場合は透明な羽に緑の血が透けて見えていたのでしょう。

ヒグラシの別名はカナカナで、陽がかげってくると鳴き出します。だから日中でも突然曇ると鳴き出したり、朝、まだ夜明け前にも鳴いています。
ただやはり夕刻が近づいた頃のカナカナカナ…という鳴き声は一種独特の哀調がありますから、昔から親しまれてきました。

  夕立の雲もとまらぬ 夏の日の かたぶく山にひぐらしの声
                            (式子内親王・新古今268)

急に夕立が来て涼しくなり、雨は上がったけれども空の雲はまだ激しく動いています。再び夏のギラギラした日射しが戻ってきましたが、やはりもう夕方ですから日は向こうの山に傾き、日の力は弱く、ヒグラシがしきりに鳴いています。

まぁこんな意味でしょうか。情熱の歌人であり、恋愛歌の名手である式子内親王の歌ですから、夕立を突然の大恋愛、残照をその思い出、カナカナを未練と捕らえる人もいますが、純粋に風景画と考えても優れた歌です。
まるで映画の一場面のようにリアルで動きのあるシーンですね。麦わら帽子と虫取り網が似合いそうです。

最近はこのような絵に描いたような夕立は少なくなり、ゲリラ豪雨とかで災害が続くのは困ったことです。
やがてツクツクホーシの声が聞こえてくると夏も終わりに近づきます。

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