★菖蒲(あやめ)の花が咲いた

菖蒲
     目立たない花が咲くのが昔ながらの菖蒲(あやめ)

菖蒲はショウブと読むのか、アヤメが正しいのか、難しい。
菖蒲 ショウブ は音読みで中国語由来。アヤメが和語。
万葉集の時代、“安夜女具佐 アヤメグサ” といえば画像のアヤメでした。

根や茎に芳香があり、それが邪気を払うと信じられ、小さなくす玉や髪飾りにする習慣がありました。
京都三大祭りの葵祭はカンアオイという目立たぬ花、正確にはカンアオインの葉で飾り付けたのと同様に、端午の節句には目立たぬアヤメの茎葉が使われたのでした。
髪飾りの花と言えば、ハイビスカスのような派手な花を思い浮かべる現代人とは美的感覚が少しちがうようです。

天照大神(アマテラスオオミカミ)が天の岩戸に隠れて世界が暗闇に包まれた時、アメノウズメがストリップまがいのダンスで大神をおびき寄せた、そのスタイルは頭にカズラの髪飾りでした。
花の髪飾りではないのが、神話の時代からの伝統です。

画像のアヤメは水辺に咲きます。
同じく水辺に生え、紫色のきれいな花を咲かせるのがカキツバタ(杜若、燕子花)。尾形光琳の国宝「燕子花図(かきつばたず)」を一番下に示しておきました。
だれが見ても別物だと区別できるのに、甲乙つけがたく、区別できないことを、いずれがアヤメかカキツバタ、というのはなぜでしょうか。

この慣用語句の元歌は、
     五月雨(さみだれ)に 沼の石垣水こえて いずれかあやめ 引きぞわづらふ 
という源三位頼政の歌です。

ヌエという妖怪、猿顔で、胴体は狸に似て、手足には虎の爪があり、尾は蛇のような姿をして宮中を煩わせていたそうですから、今でいうキメラ。その正体不明の化け物を退治したのが源頼政。
そのご褒美に、日ごろから思いを寄せていた上皇の侍女、菖蒲御前との婚姻を許される。
ところが上皇は意地悪で、菖蒲御前と同じ年頃で同じ服装をした美女をそろえ、その中で誰が菖蒲御前か言い当てたならば、その結婚を許そうとという。

切羽詰まった頼政が思わず口にしたのが、上記の歌。
その歌に思わず頬を染めたのが菖蒲御前。それを見た頼政がみごと菖蒲御前を言い当ててメデタシ、メデタシ。

五月雨の増水の際はどちらも水辺のアヤメとカキツバタは葉先しか出ていないので判別が難しいという意味です。カキツバタの花が咲いていれば誰だってすぐ判別できる。だからこの歌は本人を良く知らないので、葉先だけではよくわからないと正直な心をうたったものでしょう

ところが、いつしか湿性のアヤメは陸生のハナアヤメと混同されるようになり、先の慣用句は花の違いを区別するのは難しい、花の優劣は決めがたい、という意味になってしまいました。
今では陸生のハナアヤメが単にアヤメと称され、湿性の昔ながらのアヤメは「葉っぱのアヤメ」と主客転倒し、江戸時代からはハナショウブが大流行して、何が何だか分からなくなってしまいました。

ちょっと見では区別できない花を区別するコツは、ここというポイントを押さえることです。
水辺の本物の菖蒲は画像のように葉っぱだらけ。葉の中央に葉脈があり、それが剣を思わせる。
アヤメは陸生で、花は紫色。花びらの付け根に複雑に交差したアヤメ模様。
カキツバタは水生で、花は濃紫。花びらの中心に白い模様が一筋。葉はのっぺり。

ハナショウブや最近はやりのジャーマンアイリス、ダッチアイリスについてはまた別の機会に。
一つひとつ、確実に覚えていくのが早道です。
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      カキツバタは濃紫一色

 
 
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