★最近読んだ本『猟師の肉は腐らない』

      本
            新潮文庫 小泉武夫著 680円

東京の大学の「先生」と福島・茨城・栃木にまたがる八溝山地の奥地で愛犬クマと自給自足の生活を送る猟師の「義っしゃん」の心の交流の物語。
「先生」とはおそらく著者の分身でしょう。著者は大学で発酵学や食文化の研究者。
「義っしゃん」は著者が出会った数多くの人々を総合化し理想化した人物だろうと思います。

『猟師の肉は腐らない』というタイトルにひかれて購入しました。
電気やガス、水道がなくとも捕まえたウサギの肉を何か月も腐らせずに保管するマタギの知恵がタイトルで示されています。

久しぶりに再会した先生と義っしゃんは、賢く勇敢な猟犬クマをお供にウサギを狩り、魚を獲り、虫を食らい、ヘビを喰い、時には木の皮だって食べます。五右衛門風呂を沸かし、毎晩宴会をひらいて旧交を温めます。
その狩りの様子や調理の仕方が丁寧に描かれており、まるでワイルドライフの手引書のよう。
その味は至福の味だそうで、生き物の命を頂くのだから、少しも無駄にはしないという生き方が描かれています。

先生はヤマカガシに手を食われ、あしながバチに刺されますが、マタギの知恵で手当てされて事なきをえます。
圧巻はラスト近く、猟犬クマと手負いのイノシシとの死闘。クマの健気さに思わずほろりとしてしまいます。

近所にスーパーなどなく、作った作物は年貢として領主に採られていた時代、人々は何を食べて生きのびてきたのか、なるほどなぁと納得します。
貧しいことが不幸であるとは限らない。
義っしゃんは、厳しくとも美しく豊かな自然に囲まれて好きなことして生きてきて幸せだぁと言います。

わたしたちが便利さ、効率、能率、清潔、現金を求めた結果、失ったものの多さに驚きます。
考えてみればほんの50年ほど前まで、NHK「ひよっこ」の時代までは田舎暮らしが普通でした。

いすみ市で知り合ったHさんは昔の少年で、今でもマムシを捕獲してマムシ酒だとか、ハチと闘いながら蜂の子を捕獲して炒めて食べるとか、少年の心を持っています。
若い人でその技術を引き継ぐ人はいないものかしら。
それは縄文時代から延々と続く日本の農山村、漁村の文化と知恵とを引き継ぐ貴重な作業なんだけれど。


 
 
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