★奇怪な姿、ミミガタテンナンショウ

ミミガタテンアンショウ
     ←の部分が特徴。その部分を拡大。

ずっとマムシグサだと思っていました。
湿った山野のやや薄暗い場所に自生するサトイモ科の植物です。
すっくと立ちあがり、まるでマムシが鎌首を持ち上げているかのような姿です。

野草が好きな知人とその場所を歩いているときに、ミミガタテンナンショウだと教えられました。
マムシグサと比べると、仏炎苞(ブツエンホウ)という花びらのような部分の下部が少し張り出しているのが特徴です。

その左右に張り出した部分を「耳」と称し、ミミガタテンナンショウ(耳型天南星)と言います。
テンナンショウとはサトイモ科マムシグサの仲間一般をいいます。
拡大画像では耳型が垂れ下がり、少し内側に丸まっているのはわかります。

天南星をテンナンセイ、と読むと星の名前、冬の星座竜骨座のカノープスのことになります。
惑星を除いた星で一番明るいのが大犬座のシリウス。二番目がカノープスです。
その割に知られていないのは、冬の南の空、地平線近くで1時間ほどしか観測できないからでしょう。

地平線近くの太陽が赤いようにカノープスも赤く見えるそうです。
中国では、老人星、寿老人星、南極老人星と言われ、長寿を司る星とされました。
古代中国では、真北にある不動の白い星、北極星が天子の星とされ、真南にある赤いカノープスが長寿の星として信仰の対象になりました。

テンナンショウの本当の花は、拡大画像の中央にある緑色の棒についている多数の花です。
水芭蕉も仏炎苞の中央に棒状の花群があるのはご存知の方も多いことでしょう。
白い仏炎苞の水芭蕉が人々に愛されるのはわかりますが、茶色の仏炎苞のザゼン草だって愛されています。
つまり、同じ仲間なのにマムシ草やテンナンショウが嫌われるのは理不尽な気がしますが、気味悪いのだからしょうがない。

秋になるとその棒状の花が結実し、赤いトウモロコシの実のようになります。
一見すると食べられそうですが、毒々しい感じもしますし、実際、毒があります。
その毒を薄めると漢方の薬になり、それが長寿の秘薬としてもてはやされたのでしょう。

お正月の七福神の中の寿老人はこの天南星の化身とされています。中国文化が日本に定着したものです。
春の野で出会ったマムシグサやミミガタテンナンショウから寿老人を思い出すのはほぼ不可能。
テンナンショウという日本語としては意味不明の単語をたどると、細い糸でカノープスや寿老人にたどり着きます。

それにしても、古代では天子も庶民も長寿に憬れたのに、今日の日本では長寿がリスクとなり、
ピンピンコロリに憬れるとは変な時代になったものです。

 
 
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