★師走になればスイセンの花

スイセン
   日本水仙の花が咲き揃いはじめた

スイセンを水仙と書くことは誰でも知っていますが、それが音読み、つまり中国語読みだということに注意を払う人はあまりいません。
平安末期から鎌倉時代にかけて中国の南宋から移植された外来種で、和名はありません。
なのに、すっかり日本の景色に溶けあっています。
房総では11月から咲き始め、春先までずっと咲いています。

ヒガンバナ科スイセン属の多年草で、一度植えればほとんど世話なし。野生化しています。
球根、葉に毒があり、毎年ニラと間違えての食中毒事件が起きて世間を騒がせます。

学名は「Narcissus tazetta var. chinensis」ナルキッサス タゼッタ ファ シネンシス
ナルキッソスはギリシャ神話に登場する美少年の名前。水面に映る自分の姿に恋い焦がれて衰弱死した少年。自己愛・ナルシシズムの語源。
タゼッタは、イタリア語で「小さなコーヒー茶碗」だそうで、中央の黄色い花びら。
シネンシスは、「中国の」という意味。
つまり、日本では「日本水仙」と言っているけれど、学名は「中国水仙」となっています。

ナルキッソスが亡くなった場所に咲いた花――水辺に咲いた花だから水仙だというのですが、
ナルキッソスを本当に「水仙」と訳したのかどうか、少々疑問に感じていました。

中国にこんな伝説があることを最近知りました。
―――ある冬の寒い日、貧しい老婆の家に一人の乞食が食を乞うて訪れた。老婆は気の毒に思い、残っていたご飯を惜しまずに与えた。
満腹した乞食は、あなたの田はどこにあるのか、案内してほしいという。老婆がこっちだよと案内すると、なんと乞食は田に食べたご飯を吐き出した。驚く老婆に「これからは花を売って暮らしなさい」と告げると、近くの湖に身を投じて消えた。
翌年、吐き出した飯粒から芽が出て花が咲き、老婆はその花を売って豊かに暮らすことができた。あの乞食は仙人だったのかと老婆は思った。湖に消えた仙人が残してくれた花なので「水仙花」呼ばれることになった。―――

吐き出した飯粒から水仙が生まれたとは、あまりきれいな話ではありませんが
日本神話では、スサノオを歓待するためにオオゲツ姫が鼻や口、尻から様々な食材を取り出して調理したとあります。
スサノオはそれを汚い・無礼だとして姫を切り殺すのですが、古代人の心性では、食物や有用な物、きれいな花などは神様の体内から産まれたと信じていました。
その点で、吐いた飯粒から水仙が生まれたとする伝説は古代神話と共通するものがあります。
それを汚いと感じるスサノオは現代人に近い心性です。

「水仙」とは中国語ですから、水仙の語源としては中国の伝説のほうがすっきり納得できます。


 
 
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