★深堀・瀧口神社(1)

深堀瀧口神社
     深堀氏碑と瀧口神社。境内は広い。

大原はだかまつりの季節になりました。
大原地区のみならず、北部の東海地区、南部の波花地区の18の神社が参加する数百年の伝統を持つ祭礼です。
なかでも各社の神輿が集まる大原海水浴場での汐ふみと大原小学校校庭での大別れ式は圧巻で、一度は見るべき祭礼でしょう。

深堀にある瀧口神社は東海6地区(深堀、新田、若山、釈迦谷、北日在、南日在)の6神社の親神であり、はだかまつり18社の中でも一方の雄として穏然たる勢力を持ち、権威のある神社です。

その神社の入り口に画像のような石碑があります。
「深堀氏碑」―――多くの人にとって深堀氏って誰?の世界ですね。

話は861年前、1255年にさかのぼります。
上総国深堀の住人、深堀能仲(ヨシナカ)は、この年、ご褒美として肥前国彼杵郡戸八浦の地頭に任じられました。
というのもさる1221年に京都の後鳥羽上皇らが鎌倉幕府打倒の兵をあげました(承久の乱)。
源氏の血筋が絶えたのを絶好の機会と見たわけです。北条政子が涙ながらに頼朝の恩を説き、御家人は「いざ鎌倉」とはせ参じ、上皇、天皇、公家方勢力を完全に粉砕しました。

上皇らは島流し。没収した彼らの領地は鎌倉武士団に分配されました。深堀能仲はよほど戦功があったのでしょう。1255年に肥前国(長崎)に新領地を得ました。しかし、東国武士の作法と西国の流儀は違うので、きっと、ずいぶん苦労したことでしょう。

深堀氏はやがて新領地に定着し、現地の有力武士団として成長していきます。
幕末まで肥前鍋島藩では家老職を務める家柄だったそうで、その本家のあった地域は深堀町として現存しています。

深堀氏はその出身地である上総国大原よりも、赴任先である肥前国での方がずっと有名です。
普通は、あらたに領地を得ても、現有地に親族を残すものですが、残った親族がどうなったかの話は聞きませんから、一族そろって九州肥前の国に移ったのかもしれません。

深堀氏の先祖は三浦半島の豪族三浦氏につながるらしい。
三浦一族と言っても良いのでしょうが、三浦氏が権力争いで滅びると、和田義盛の親戚と称したようです。やがて和田氏も滅びてしまうと、深堀氏として独立します。

この地域が深堀と言われるのは、深堀氏がかつて居住していたからではなく、もともと地元では深堀という地名だったからでしょう。
その地名をもって自らの苗字としたのが深堀氏だったはずです。

ここが深堀と呼ばれた理由は、付近を流れる新田川の流れが急峻だからでしょう。
その深い渓谷を領主の館の掘として利用したことは十分考えられることです。
実際、すこし上流にある天台宗の古刹、坂水寺(バンスイジ)の前を流れる新田川は深く、まるで坂に水を流したようであり、背後は天然の山林ですから、往時はイザと言う時には深堀氏の館を守る要塞になった可能性を今日に残しています。

さて、神社の名前である瀧口とは、瀧のふもとを意味しますが、周囲に落下する滝などありません。すると、この滝は滑り落ちる滝、すなわち滑瀧(ナメタキ)のことだと理解できます。

木戸泉の交差点から北へ国道465号を600m、深堀の信号のちょい東の橋から見る新田川の滑瀧はゴミさえなければなかなか見事です。カワセミも飛んでいました。
瀧口神社にふさわしい景色です。

この瀧口神社は社伝によれば、創建当時はもっと海岸寄りにあったが津波で損壊し、現在地に移転したそうです。
深堀氏の館跡がどこか今では全く不明です。
現瀧口神社の敷地は三方を屈曲する新田川と塩田川に囲まれ、他の一方は山です。防衛に適した地形ですから、深堀氏館跡地の一画に瀧口神社が再建されたのだろうと、勝手に想像することは楽しいことです。

その山裾を国道が通っています。伊南地方と伊北地方を結ぶ古くからの重要街道であったとすると、深堀氏はその街道を支配することで勢力を広げ、武力・財力を蓄えたのでしょう。

その深堀氏が参拝し、保護したであろう瀧口神社であるからこそ、東海地区の各神社がこぞって瀧口神社を親神様として尊崇し、現在も慕っているのでしょう。


  
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コメント

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先日コメントにて質問させて頂いた者です。

本文拝読させていただきました。深堀瀧口神社について解りやすく明確な文章でまとめて頂き有り難うございます。また、瀧口神社に御来訪頂いた際境内の本殿の隣に八代があったと想います。これは深堀八坂神社といいます。御祭神は建早須佐之男命です。須佐之男命と言えば出雲系の神社の祖神にあたり、海神の他に海を司っている神でもあります。この両祭神を祀っている瀧口神社はいすみ市の海を司る社だったのではないかと私は推測しています。たまこう言った機会がありましたら是非いらしてください。今後もこのブログは楽しみに見させていただきます。