★むかし、日本に軍隊があったころ――ホックレー事件

シーファイアー

  英軍の艦上戦闘機シーファイアー。スピッツファイアーの兄弟機。(画像はプラモデル)

1945年8月15日に玉音放送(天皇の肉声放送)があり、国民に敗戦が告げられました。
その2時間ほど前、長南町の永沼の田んぼ脇の山林に一機の英国海軍所属の戦闘機が白い煙をはきながら墜落しました。
イギリス空母インデファティーカブルより飛来したシーファイア戦闘機が、茂原航空隊のゼロ戦との空中戦で被弾して墜落したものです。

パイロットのフレッド ホックレー(Fred HOCKLEY)中尉は、パラシュートで一山越えた小生田の山中に降下して無事。初めて間近に見る日本の景色を興味深げに見渡していたところ、様子を見に来た村人に自分の携行食を差し出したりしたのは自分には敵意がない、暴れたりしないという意思表示であったのでしょう。

やがて続々と集まってくる村人や地元の警防団、九十九里浜防衛の陸軍駐屯部隊に捕まり、ロープでぐるぐる巻きにされ、目隠しの上、東村国民学校(現・長南町立東小学校)に連行されました。
同校には当時426連隊の教育隊が駐屯しており、裏の農機具小屋にてさっそく尋問が行われました。
ホックレー中尉はまもなく戦争は終わると述べたそうです。頭にはトビ口でやられたらしい傷があったといいますから、一部暴徒化した民衆から攻撃されたのかもしれません。

敵国捕虜の身柄をどう扱うか、現地では判断できず上級機関の判断を仰ぐことになります。
ホックレー中尉の言明通り、天皇の玉音放送あり、その後、リヤカーで土睦村(現・睦沢町)岩井の妙勝寺に駐屯する第147師団426連隊本部に送られ、将校の宿舎として接収されていた隣家の庭の木に縛られました。

その姿を納屋のすき間から覗き見たというその家の婦人は、ホックレーが外人にしては小柄だったと語っていたそうです。妙勝寺は、今は無人寺になっています。

その日の夕方、一宮町に駐屯する同連隊の中隊本部に連行されました。
一宮町の中隊本部は接収した某煉瓦商の屋敷だったそうで、広い屋敷は今何もなく、倉庫が一棟残っているのみとなりました。

この間、426連隊長の田村禎一大佐が鶴舞にあった147師団司令部にホックレーの処遇を問い合わせたところ、師団参謀の平野昇少佐が「連隊で処置せよ」との指示を与えたとされます。

当時の軍隊では「処置」とは「処刑」と同じ意味で使われることが一般的です。
田村大佐は部下の藤野政三大尉にホックレーの処刑を命じ、藤野大尉はその夜、ホックレーを一宮市街地4キロ南方の洞庭湖付近の山中に連行し、拳銃で撃ち、刀でとどめを刺しました。

遺体はその場に埋められ、すべては闇の中に葬られたかのように見えましたが、連合軍が進駐し、撃墜された米英軍パイロットの消息調べが始まりました。
同年10月中旬、田村大佐らにより遺体は掘り起こされ、火葬された後、一宮町の実本寺に遺骨が安置されることになります。
火葬してしまえば死因を特定できず、丁寧に葬ったと言い逃れができると踏んだのでしょう。

この事件は戦後、香港でのイギリス裁判で裁かれ、426連隊長の田村禎一大佐と147師団司令部参謀の平野昇少佐が絞首刑、処刑実行者の藤野政三大尉が懲役15年の判決を受けました。
ホックレー中尉の遺骨はその後、横浜の英連邦戦死者墓地に埋葬されました

この事件は玉音放送の後におきました。
玉音放送はあっても軍の指揮命令系とは維持され、まだ武装解除もされておりません。
敵のパイロットなど殺して当然の時代風潮だったのでしょう。

戦争は国家と国家の争いですから、戦闘員各個人には責任がない、というのが国際法です。
降参した戦闘員の処遇は尊重されるのが戦時国際法上の取り決めで、当時の日本もそのルールに建前上は従っておりました。

ホックレー中尉自身は降参したのだから保護されると思っていたことでしょう。
まして玉音放送の後ですから、捕虜虐待のみならず、いわば殺人罪に等しいとして起訴されました。

戦犯というと東条英機らA級戦犯が思い浮かびますが、ABCは程度の差ではなく、内容の差。
A級とは戦争指導の罪、B級は捕虜虐待など戦時国際法の違反。C級は民間人の虐殺などその他人道上の罪。

この事件はB級戦犯に相当します。
もちろん、勝者が敗者を裁いた裁判という側面はあるでしょう。
実際には、日本も米国も敵国兵・敵国市民に対して、無差別殺戮を繰り返していました。
いざ戦争となると通常の人の心は失われ、殺して当然の心理になります。

そんな時代は二度と繰り返さない、少なくとも日本は--というのが現憲法の精神です。
今度の参議院選挙、うまくいったら自衛隊を国防軍に昇格させると狙っている人々がいます。
一般民衆を含めて人殺しを是とした時代。
そんな時代の再来はまっぴらごめんです。

なお、東京の友人から次のような動画がシェアされてきました。
なぜ改憲を目指すのか、赤裸々に語られています。
youtube https://www.youtube.com/watch?v=h9x2n5CKhn8&feature=youtu.be



 
 
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