★蛍の季節になればホタルブクロが咲く

ホタルブクロ
      庭の紫色のホタルブクロ

子どものころ川崎に住んでいましたから、蛍など見たことがありませんでした。
中学生の時、川端先生に理科を習いました。
生徒たちは「あ、川端柳が来た!」などと失礼なことを言っておりましたが、それはもちろん、♪蛍の宿は川端柳…という歌の一節からとったあだ名でした。

浴衣を着て手にウチワを持って歩く図柄を見たのは何のときだったのでしょか。
蚊帳(カヤ)の中に蛍を放つなんてことも覚えていますから、蛍は夏の風物詩だと思い込んでいました。

ところが、いすみ市では蛍の季節は5月下旬から6月初旬が最盛期です。
それはもう見事なもので、飛び交う無数の蛍をみているとメマイを覚えるほどです。
谷底から湧き上がるようにフラフラと泳ぎだし、上空に舞う個体もおります。
あれも蛍かと思えば、それはまばたく星だったりして目の悪さに笑ってしまいます。

今年は例年より早く、もう蛍祭りが始まっています。
その地域はホタル保護に力をいれ、農薬の使用は最小限にして土留めの水路の確保、つまり蛍の生育環境の保護に努めています。
蛍祭りともなれば、都会から続々と来る客を誘導するために地元の人が動員されます。
それも大変でしょうね。

   もの思えば沢の蛍もわが身よりあくがれいづる魂(たま)かとぞ見る  和泉式部
――恋に悩んでいると、川に飛び交う蛍が、まるでふらふらとさまよう自分の心にように見えてくる――

現代人は蛍の光をまるでLEDの点滅イルミネーションのごとく鑑賞するけれど
昔の人は蛍の光を、魂の輝き と感じたようです。
和泉式部の場合、かなわぬ恋、届かぬ恋に乱れる心の表象として描かれています。

しかしロマティックな光だと思うのは、平安時代、朝廷が安定してからの話で
それ以前、天照大神が孫のニニギを地上に降下させようとしたとき、地上の実相は

   彼地多有蛍火之光神及蠅聲邪神   日本書紀巻2
――かの地、蛍火の輝く神と蠅のようにうるさい声のよこしまな神が多数いる――

蛍の光は列島原住民の荒ぶる魂の光として、邪神を象徴しています。
つまり怪しい光であり、切ない魂の光やロマンティックな光ではありません。

しかし 邪心、悪心、善心、恋心はともかくとして、蛍の光は人間の心がついフラフラと身体から遊離した状態で光ると感じたのは大昔から共通だったようです。
だから現代人も点滅する蛍の光にちょっとは感じるところがあるのでしょう。

ホタルブクロの花が咲くと蛍の季節になる――よくできた自然の連携です。
何有荘に蛍は飛んできませんが、ホタルブクロがその季節だよと教えてくれます。


 
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