★10月のホトトギス

ホトトギス
    太東漁港近くの山道にホトトギスの花が咲いていました

ホトトギスと言えば【目には青葉 山ほととぎす 初がつを ――山口素堂】 を思い浮かべます。
つまり初夏を象徴する野鳥です。

ところがその名もズバリ、ホトトギスという野草が秋になると山間に咲きます。
たいして標高が高くないいすみの山野ですが、いすみ市にも咲き始めました。

山道を歩いている時にホトトギスに出会うと、そこだけスポットライトを浴びたように華やかに見え、そんな山道を歩くのが好きです。

野鳥のホトトギスと野草のホトトギス。
なぜ同じ名前なのかというと、野鳥のホトトギスの胸のドット模様とこの花のドット模様が似ているからだというのが通説のようです。

野鳥のホトトギスは口の中が赤く、『啼いて血を吐く』といわれるほど情熱的にしつこく鳴き続けます。
結核患者になった正岡子規が自らを子規と名付けた由縁でしょう。
子規でホトトギスと読みます。

野草のホトトギスにも、正岡子規と同じくらい切ない伝説があります。

――むかし、ある山奥に貧しくとも仲の良い兄弟が住んでおりました。ところがある日、兄は病に倒れ、かろうじて回復しますが体は動かず、失明してしまいます。
心やさしい弟は、兄の回復を祈り、貧しい食べ物の中から兄には美味しく栄養のあるものを食べさせ、自分は残り物を食べていました。そのことを兄に知られて心配をかけまいと隠していました。
しかし、兄はしだいに不自然な弟の態度を疑いはじめました。
「オレの目が見えないのをいいことに、隠れて美味しいものを食べているに違いない」と。
ある日、兄は弟を問い詰め、否定する弟に激高し、短刀を弟の胸に突き刺します。
そのとき、飛び散った血が兄の眼に入ると、兄は光りを取り戻したのです。
そして、すかさず弟の腹を割いて胃の中を確かめると、芋のツルばかり。
兄の目が見たものは、痩せ衰えて枯れ木のようになっていた弟の変わり果てた姿でした。
兄は一瞬にして自分の愚かさを悟ります。
弟を抱きしめて 「おとと(弟)こいし 弟恋し」と泣き叫び続けると、喉は裂けて血が滴り、魂が抜けて鳥になってしまいました。
木の枝に止まり、喉から血を吐きながら「弟恋し」と鳴き続けるうちに、胸は血の滴(シズク)に染まり、枝の下草も血の滴に染まりました。
やがて秋になると、そこに滴った血痕模様の花が咲くようになりました。―――

山野に人知れずひっそりと咲く秋の花ホトトギス。
何か思わしげに鳴く初夏のホトトギス。
その花と野鳥にはこんな悲劇があったのだと想像した昔の人ってすごいですね。



 
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