★天空からの贈り物―――マンジュシャゲ

曼珠沙華
   曼珠沙華を見ていると、何と妖しい花かと思いませんか

葉が1枚もなく、薄い緑色の細い茎だけがスクッと立ちあがると、大きく真っ赤な花を咲かせます。
その花もどれが花びらなのか、赤く細い線が無数に広がっている感じがします。

球根にアルカイド系の毒があり、昔は土葬された遺体を野生動物から守るために墓場周辺に植えられました。
その花が秋の彼岸のころに一斉に花咲かせるので、昔の人はそれを不思議・不吉に思い、死人花(シビトバナ)、地獄花、幽霊花などの名前で呼んだ人もいました。

お彼岸にはお墓参りに行きます。
彼岸の1週間は、あの世のご先祖様とこの世の子孫が出会って交流する日ですから霊的な日々であり、非日常的な雰囲気があるこの花が彼岸花と名付けられたのでしょう。

  曼珠沙華咲く野の日暮れは何かなしに
          狐が出るとおもふ大人の今も    木下利玄(1886-1925)  

この時期には恨みを呑んで死んだ亡霊や幽霊・化け物、悪鬼が出没し、
亡き人を想う心に付けこんで、化けたキツネが人をだます――などと信じられました。

彼岸の本当の意味は「すべての苦から解放されたあの世」という意味。
苦に満ちたこの世を此岸(シガン)といいます。
したがって、彼岸花とは本来は極楽浄土に咲く花という明るいニュアンスがあります。

お釈迦様が教えを説いた時、神々や仏様、一般大衆は感激し、地はとどろいたと法華経にあります。(妙法蓮華経 序品第一)
その時に天から雨の如く降り注いだのが、ウドンゲとマンジュシャゲの大小の花びら。

ウドンゲとは何か、マンジュシャゲとは何か、どんな花かと様々議論がありますが
マンジュシャゲとは彼岸花のことである、ということになっています。
その点でも彼岸花は天から降った歓喜の花として扱われています。

最近はリコリスと呼ばれる欧米発のカラフルな品種が出回り、この花に不吉な印象を持つ人はいないようです。
英名ではスパイダーリリー、ハリケーンリリー、クラスターアネモネなどと、外見を描写したあっけらかんとした名前です。

極楽浄土の花、歓喜の花というのが本来の意味ですから、若い人たちが リコリスにワーッきれいな花ねぇ と率直に反応する方が良いのでしょう。

でも、わたしたちの世代にはどうしても、この世の花とは思えぬ妖しい花だ、という印象がぬぐえないのです。


 
 
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