★飯縄寺こぼれ話(2)フライングドラゴン

飛龍
         荒れ狂う海上に翼のある龍の彫刻

飯縄寺では撮影禁止ですが、これはまだ飯縄寺がJRと組んでいなかった頃、まださほど有名ではなかった頃の画像で、当時は撮影禁止ではありませんでした。

ご覧のように龍の背中に翼があります。
わたしは勝手に flying dragon フライングドラゴンと名付けています。
東洋では翼のある神獣は大変珍しい部類に属します。

中東から欧米ではペガサスのように翼のある馬や翼のあるスフインクスもあります。
ドラゴンとは翼のある恐竜だと考えた方がよく、龍とドラゴンは本来は別物です。
羽がない馬をペガサスと言わないように、羽のないドラゴンはいません。
ピーター ポール & マリーの “Puff,the magic dragon” のパフなんか首から小さな翼が生えていました。
   英国ウェールズの国旗≪火を噴く赤いドラゴン≫  画像元
       赤い龍

東洋の龍は一般に翼を持ちません。
風雲急を告げた時に運気に乗じて舞い上がります。
TVの『日本昔話』のタイトルバックや宮崎駿の『千と千尋の神隠し』でハクが操っていた龍は空を飛びますが翼がありません。
翼がなくとも空を飛ぶから神獣だと言っても良いでしょう。

三保の松原の天女や宇治平等院の天女も翼がなくとも空を飛びます。
もっとも長いスカーフがあればこその話ですが…。

孫悟空は筋斗雲に乗り、かぐや姫が月に帰る時、乗った牛車は雲に乗っていました。
ついでに言えば阿弥陀様も雲に乗って臨終の場に現れますね。
東洋では神聖で不可思議な存在は翼を持たないで空中を浮揚します。

飯縄寺の彫刻は波を彫らせたら当代随一、“波の伊八”こと、武志伊八郎信由(タケシ イハチロウ ノブヨシ)の作品で、宝暦元年(1751年)生まれ、没年は文政7年(1824年)。
その活躍時期は江戸後期、文化文政の町民文化の時代と重なります。

伊八の翼を持つ龍は彼のオリジナルなのでしょうか。
この時代、すでに西洋絵画、油絵、遠近法は知られていました。
伊八が西欧の翼のあるドラゴンを見知っていたかどうか、証拠は全くありませんが、知っていて翼のある龍を彫ったとするとおもしろいですね。夢が広がります。

一方、夢もへったくりもありませんが実は中国・日本にも翼のある龍の伝説はあります。
下記画像は日光東照宮御水舎【重文】の唐破風の下にある『飛龍』の彫刻です。
      応龍   画像元    

飛龍ですからフライングドラゴンですね。
正しい名前は「応龍」といい、龍の一族の中でも高等部類に属しますが、翼のある龍は日本ではほとんど知られていません。
何となくコッケイな姿で、伊八の彫刻のような威厳がありません。
胴体は魚で尾ひれがあり、水鳥のような翼を持ち、脚も鳥脚のようで、頭だけが龍。
伊八が応龍を念頭に飯縄寺のフライングドラゴンを彫ったとはとうてい思えません。

するとやっぱり、西欧のドラゴンが発想の起点だったと思う方が自然のような気がします。
麒麟(キリン)も本来は翼を持ちませんが、東京日本橋の中央欄干にある“翼のある麒麟”は東野圭吾の推理小説で有名になりました。渡辺長男 ワタナベオサオ 明治44年製作
伊八の”翼のある龍”と渡辺氏の”翼のある麒麟”はどちらもリアルで迫力があり、どちらも素晴らしい作品です。


 
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