★月桂樹の花が咲いた


 剪定枝を風呂に入れて、ローレル風呂にすると気分はイタリア

シチューやカレーには欠かせない月桂樹、日本ではローレル(英語: laurel)、ロリエ(フランス語: laurier)、ベイリーフ(英語: bay leaf, bay leaves)とも呼ばれるから面倒くさい。

月桂樹はもちろん中国名で、月に生える桂の木の意味。本来は想像上の樹木です。
中国の「桂」はキンモクセイのことで、そういえば花の形が似てなくもない。
花に香りはほとんどないが、枝や葉にほのかな香りがあります。
中国では月世界で薬草をつくウサギの脇に描かれることが多く、不老長寿の樹だそうです。
日本に来たのは明治になってからなので和名はなく、月桂樹をそのままゲッケイジュと読みます。

月桂樹の枝葉をサークレットにした冠が「月桂冠」で、日本酒の名前になっていますが、マラソン優勝者の冠として日本でもおなじみになりました。
黄金の冠よりも何よりも、月桂冠はスポーツ選手にはよく似合います。
ギリシャ神話の光明神・アポロンを象徴する樹で、アポロンは芸術・スポーツの神でもあるので、優勝者はアポロンに愛された者として月桂冠を戴冠する栄誉を得るのです。

アポロンが月桂冠をいつも愛していたのには次のような話が伝えられています。

―――ある日、弓の名手アポロンは同じく弓を扱うエロス(ローマ名:キューピッド)に対して「そんな小さな弓じゃ何の役にもたたないだろう」とからかった。
エロスは「そうかな。この弓の恐ろしさを知って悔やまなければいいのだけれど」と言い置いて立ち去った。
それからしばらくして、アポロンは弓を構えて森の獲物を探していたが、森陰に美しい娘を発見した。
誰だろう、何をしているのだろうと隠れて見ている時にエロスの黄金の矢がアポロンの胸に刺さった。ほぼ同時に娘の胸に鉛(ナマリ)の矢が刺さった。
エロスの黄金の鏃(ヤジリ)は恋する矢、鉛の鏃は忌み嫌う矢だった。
娘は河の神ペーネイオスの娘ダフネ。まだ恋にあこがれる歳でもなく、あまた舞い込む求婚の申し出もすべて断っていたのにエロスの鉛の矢が刺したのだから、アポロンに気づくと恐れおののいて逃げ出した。
一方、アポロンはダフネに一目ぼれ。今回は逃げられてしまったものの、次回会ったらなんとか話だけでもしてみたいと思った。ところがめったに出会わない。たまに出会うとすぐ逃げられる。
そういう仕打ちに会あえば会うほど、恋心がどんどん募っていく。
夜も寝られない。こんなに愛しているのにもう我慢できない。
今度会ったら絶対逃さないと決意する。
そして運命の日となった。アポロンは森を越え河を渡り追いかけた。そして必死に呼びかける。
ダフネは速度をゆるめない。後ろを振り向かない。恐怖におびえながら必死に逃げる。

両者の間合いはしだいに短くなり、足音が後ろに迫ってくる。
アポロンの激しく吐く息がダフネの髪にかかり、手がダフネの肩にかかる気配に絶望のあまり声をあげた。「お父さま、助けて!!」
肩に手がかかった瞬間、アポロンは喜びに包まれたが、それはその瞬間だけだった。
ダフネの柔らかい肢体はみるみるこわばり始める。美しい髪は緑の葉に変わり、天に伸ばした腕はそのまま木の枝へと変わっていく。
あれほどしなやかで速く走っていた足は大地に張りつき、しだいに地中にめり込み根を張った。
アポロンは愕然とした。
美しいダフネは消え、一本の月桂樹がそこにあった。
アポロンは三日三晩、月桂樹の下で泣いた。
それからアポロンは立ち上がり、月桂樹の枝葉でサークレットを作り頭に載せた。
「ダフネ。わたしはもう君を追いかけない。だけどもういつも君と一緒だ。―――

ダフネの危機を救ったのは父・河の神ペーネイオスともゼウス大神とも伝えられています。
下の画像はジャン・ロレンツオ・ベルニーニ (1598~1680)作≪アポロンとダフネ≫。
伊:ボルゲーゼ美術館蔵。ダフネが月桂樹になる瞬間を大理石で彫り起こした傑作。
どこかまだ幼い少年・少女の面影を残した二人に起きた悲劇。困惑するアポロン、絶望のダフネが痛々しい。
 画像元→●

 

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