★疱瘡(ホウソウ)神社(2) あんば様  


  いすみ市若山2613―1(?)

「あんば様」という単語をこちらに来て初めて知りました。
いすみ市深堀にある大杉神社のことを「あんば様」というようです。
   ○あんば大杉大明神、悪魔をはらってヨーイヤセ…
   ○あんばの方から吹く風は、疱瘡かるくの便り風 

江戸時代に流行した数々の「あんばばやし」の一節です。
はるか大昔、霞ケ浦の南岸に、東に突き出た「安婆島 アバノシマ」という半島があり、そこに巨大な杉が立っていました。
日光開山の勝道(ショウドウ)上人が、疫病を退散させるため、この巨杉の下で祈祷すると、三輪の大神が杉の大枝に飛び移り大杉大神となり、以来「海河守護、悪疫退散」の守護神として祀られてきたそうです。

安婆島は現在の茨城県稲敷市阿波となり、全国の大杉神社の本社があります。
その土地の名前が「阿波」なので「あんば様」。
江戸時代の利根川水運、太平洋海運の発達にともなって関東を中心に全国に広まり、いすみ市大原にも定着したのでしょう。
疫病、とりわけ疱瘡から守ってくれる神であるとともに、航海の安全や漁業の神でもあったのですから、漁師の町・大原にあるのは当然と言えば当然ですね。

農産物直販店「なのはな」の近くで、日在(ヒアリ)地区、深堀地区、若山地区が複雑に入り組んだ場所にあります。
どの地区からもその中心地からは遠く離れた場所にあり、そこに住んでいる人もどこが地区の境界なのか不確かでした。

「大杉神社はどこですか?」と尋ねても「知らない」と言われました。
実はほんの100mほど先にあったのですが、知らない人は知らない。
江戸時代の集落が基本となっている「地区」では隣の「地区」は「隣村」。
隣村のことは知らない、関係ないという考えが基本にあり、神社のことは興味がない、関与していないとなれば100m先の神社だって眼に入らなかったのでしょう。

イワシの群れは九十九里浜からはとうの昔に遠のいてしまい、地引網は観光資源として細々と残っているだけになりました。
疱瘡(天然痘)も1980年にはWHOが世界根絶宣言を出し、患者は全世界的にいなくなりました。
疱瘡は万人を恐怖に陥れる疫病ではなくなり、その恐ろしさの実感がなくなりましたから、疱瘡を制圧する神様に対する畏敬の念もそれに比例して薄くなりました。
あんば様の出番は今はないも同然です。

地元とはいえ他地区の人が「あんば様」を「知らない」ことを責めるわけにはいきません。
「あんば様」は今は現在地にただひっそりとたたずんでいるだけです。

 

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