★竹林の中にクマガイソウ(熊谷草)

クマガイソウ
    袋状になったきわめて特徴的な花が咲く

レッドデータ、絶滅危惧種Ⅱ類、千葉県重要保護植物。
荒れた竹林を整備してくれたら、そこのタケノコはどうぞご自由に、ということで仲間とともに足を踏み入れた竹林で見つけたクマガイソウです。

竹林は何本も古い竹が風で倒れており、ジャングル状態、無秩序、密集した竹を運び出し、切り倒し、焼却して竹炭を作り、竹チップを作るなど、竹林整備は思いのほか大変です。
そこでクマガイソウを見つけた時はびっくりしました。
なにせ千葉県に限らず、全国的に絶滅の危機にあるラン科の植物です。

手入れの行き届いた大きな農家やお寺の庭、あるいは野草園で見たことがあります。野生状態で見たのは初めてでした。
竹林のそこここに生えていますが、竹林整備作業で踏まれてしまいます。あわてて目印になる竹棒を刺して注意を喚起しておきました。

きわめて特徴的な花の形を昔の騎馬武者が背中に負った母衣(ホロ)に見立てたものです。
クマガイソウにそっくリで、花の色が濃い紫だと、アツモリソウ(敦盛草)と言います。

敦盛は平家の公達。一の谷の合戦で沖合の平家の船に逃げ込む寸前で、源氏方の熊谷直実に討たれます。
自分の息子ぐらいの年齢の若武者だと気づき、一度は見逃そうと思った直実ですが、後から押し寄せる味方の手前、やむなく格闘の末に首を落します。

『平家物語』のこの一節にちなんで、地味な花が年寄りの熊谷直実、濃い紫のあでやかな花が平敦盛というわけです。
命名者はだれだか知りませんが、なかなか趣のある命名です。

      アツモリクマガイ7
       画像元: 『平家物語画帳、敦盛最期』 根津美術館


 

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★山椒の雄花、雌花

オス花メス花
   左=雄花は「葉山椒」、 右=雌花は「実山椒」ともいうらしい

庭に山椒が1本あるととても重宝します。
花と言ったらサクラ。「木の芽」と言ったら山椒。日本を代表するハーブです。

庭には3本の山椒があり、花が咲くのに実がなりません。
栄養が悪いのか、日当たりのせいか、それともまだ若いからか、などと思ってきました。
なんと山椒には雄の樹と雌の樹があるのだと、後になって知りました。

雄の樹は花が咲いても花粉を飛ばすだけだから実はできない。
3本とも雄でした。いくら手入れしても実がならないのは当然です。
画像のように雄花は支離滅裂に花が咲き、雌花は初めから山椒の実のごとくまとまっています。
雌花はこれから頭頂部が割れてメシベが出てきて受粉します。

花も実もない時期の山椒のオスメスを区別する方法はないようです。
購入苗が葉山椒か実山椒か、確率50%。神のみぞ知りたもう。
経験からすると、実山椒は少ない気がします。

それで実山椒が自生している場所を覚えておき、今までその季節になると採集に行きました。
それも面倒になったので、今年は挿し木に挑戦しようかと思っています。
6月ごろが適期だそうです。


 

★奇怪な姿、ミミガタテンナンショウ

ミミガタテンアンショウ
     ←の部分が特徴。その部分を拡大。

ずっとマムシグサだと思っていました。
湿った山野のやや薄暗い場所に自生するサトイモ科の植物です。
すっくと立ちあがり、まるでマムシが鎌首を持ち上げているかのような姿です。

野草が好きな知人とその場所を歩いているときに、ミミガタテンナンショウだと教えられました。
マムシグサと比べると、仏炎苞(ブツエンホウ)という花びらのような部分の下部が少し張り出しているのが特徴です。

その左右に張り出した部分を「耳」と称し、ミミガタテンナンショウ(耳型天南星)と言います。
テンナンショウとはサトイモ科マムシグサの仲間一般をいいます。
拡大画像では耳型が垂れ下がり、少し内側に丸まっているのはわかります。

天南星をテンナンセイ、と読むと星の名前、冬の星座竜骨座のカノープスのことになります。
惑星を除いた星で一番明るいのが大犬座のシリウス。二番目がカノープスです。
その割に知られていないのは、冬の南の空、地平線近くで1時間ほどしか観測できないからでしょう。

地平線近くの太陽が赤いようにカノープスも赤く見えるそうです。
中国では、老人星、寿老人星、南極老人星と言われ、長寿を司る星とされました。
古代中国では、真北にある不動の白い星、北極星が天子の星とされ、真南にある赤いカノープスが長寿の星として信仰の対象になりました。

テンナンショウの本当の花は、拡大画像の中央にある緑色の棒についている多数の花です。
水芭蕉も仏炎苞の中央に棒状の花群があるのはご存知の方も多いことでしょう。
白い仏炎苞の水芭蕉が人々に愛されるのはわかりますが、茶色の仏炎苞のザゼン草だって愛されています。
つまり、同じ仲間なのにマムシ草やテンナンショウが嫌われるのは理不尽な気がしますが、気味悪いのだからしょうがない。

秋になるとその棒状の花が結実し、赤いトウモロコシの実のようになります。
一見すると食べられそうですが、毒々しい感じもしますし、実際、毒があります。
その毒を薄めると漢方の薬になり、それが長寿の秘薬としてもてはやされたのでしょう。

お正月の七福神の中の寿老人はこの天南星の化身とされています。中国文化が日本に定着したものです。
春の野で出会ったマムシグサやミミガタテンナンショウから寿老人を思い出すのはほぼ不可能。
テンナンショウという日本語としては意味不明の単語をたどると、細い糸でカノープスや寿老人にたどり着きます。

それにしても、古代では天子も庶民も長寿に憬れたのに、今日の日本では長寿がリスクとなり、
ピンピンコロリに憬れるとは変な時代になったものです。

 
 

★菜種梅雨にシャガの花

シャガ
    庭のシャガが咲き始めました

シャガの学名は Iris japonica アイリス ジャポニカ 。日本のアヤメという意味です。
本当は中国原産だけど、国際的に品種登録された時、発見者が日本の個体を持ち込んで国際登録されたのでしょう。

画像の花をどの植物図鑑でもシャガといい、漢字で「射干」と書きますが混乱があります。
射干と書き、ヤカンと読むと、ヒオウギアヤメ(檜扇)の赤い花をさします。
それで区別するために「著莪」と書き、中国名の「胡蝶花」という場合もあります。

種なしスイカと同じように3倍体なので種ができず、地下茎で増え、群落をつくります。
山で数株もらってきて庭に植えたらどんどん増え、だいぶ間引いて山に返しました。

タンポポなんかは風で種子を四方八方へ運び、勢力範囲を広げますが、シャガは地下茎、正確には匍匐枝(ホフクシ)だから自分の周りにしか増えない。
つまり、山野にあるシャガはかつて誰かさんが植えたものだと考えられます。
日本中すべてのシャガが遺伝子的には同一のクローンです。

    紫の斑の仏めく著莪の花         高浜虚子

どの花もアップで見ると細かい点に気付きます。
どの花も非常に精巧な作りになっていて驚嘆いたします。
別に人間様に褒められようとして飾った花ではないし、虫媒花ではないから昆虫を引き付けるための罠(ワナ)でもありません。

杉林などの薄暗い片隅にひっそりと咲き、群落になっていると、そこだけパーッと明るくなっている感じがします。
花には人を励まし、人を勇気づける力があります。
人間はロボットではなく、自然界の一員ですから、花に感激し、感応する能力が備わっているのだと思います。


 
 

★さくら咲く、アンズ咲く

陽光
アンズ
        上=陽光桜  下=アンズ
桜の品種は多くてとても見分けられません。
一番多い種類はソメイヨシノ(染井吉野)で、全国桜前線の標準木になっており、これなら私でもわかります。
遠い昔、小学校の校庭にあったのもソメイヨシノでした。
葉桜のころになると校庭に毛虫が落ちてきて、苦労した思い出があります。

画像は新しい人気の品種で早咲きの“陽光”。
ホームセンターの苗木売り場では桜苗木の約半数が陽光となっています。
ソメイヨシノと同じように葉が出る前に花が満開となり、ソメイヨシノよりも色が濃いので絢爛豪華な印象があります。

ようやくいすみ市でも桜が咲き始めました。
待ちに待った桜も満開になるともう散り始めます。

     ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ  紀友則

満開の桜を見ると感嘆します。毎年見ているのに毎年感嘆します。
桜のパーッと咲く満開のエネルギーのおすそ分けを頂きに花見に出かけるのでしょう。
それが長続きせず 「静心無く」 散ってしまうのも何やら人生に似ています。
でも、また来年があるからね。また来年は花咲かせようと思ったりします。

下の画像はアンズの花。
アンズの樹だと知っているからアンズだと思うけれど、知らなければ梅や桜、桃との区別が難しい。

しいて言えば花弁が白く、花弁をまとめている萼(ガク)・苞(ホウ)が赤い。
梅はもう咲き終わっており、梅の花より大きいので区別がつきます。
桜との違いは花軸がなく、枝から直接花が咲くので区別がつきます。
1枚1枚の花弁が丸いのがアンズ、尖っているのが桃。

中国の古典(漢文)に桜の花は出てこないので、日本の桜は中国人にも最近は大人気のようです。
中国で古典的な花は、梅、桃、杏。
美しい花が咲くし美味しい実もできる。
つまり花も実もある実用的、現実的、実利的なものが中国人は昔から好きなのだといったら語弊があるかな。

反対にサクランボもできない桜に精神性を見出して、天皇のため、お国ために死ねとまで教育したのは狂信的でした。
教育勅語の時代は桜にとってははた迷惑な時代でした。